もしも源平合戦にVALUがあったら③

shibaigoya

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前回

第三話 以仁王、芭流(VALU)に乗っかる事。

この清盛の「芭流(VALU)」の動きにいち早く気が付いたのが、以仁王(もちひとおう)である。

以仁王は元々皇太子で、次の天皇になる皇位継承者だったのだが、清盛の政略によって皇位継承権をはく奪されてしまっていた。

「芭流か……」

清盛に不満を持つものは多い、しかしこの「芭流」は後白河法皇をはじめ多くの公家が乗り気らしい。
ならばあえて同じ土俵に上がり、清盛が作ったこの仕組みの中で、清盛を負かせば……清盛の”価値”を下げる事ができれば……。

「全国の武士にこれを伝えよう」

そして以仁王は、この芭流に乗っかり、芭流人となる事を命じる令旨(りょうじ)を発布したのだった。

ちなみに令旨というのは皇太子が発行する命令書の事で、以仁王の立場的には「御教書(みぎょうしょ)」と言うべきではあるのだが、あえて「令旨」として発行した。

芭流で価値が高まれば、自分もまた皇太子に返り咲けるかもしれない。
そういう希望を抱いていた。

「まずは、余の芭を買うのだ!」

しかし……以仁王の芭は思った以上に売れなかった。
期待していた河内源氏の勢力が動かない。
以仁王の芭を購入したのは、親しかった摂津源氏だけだったのだ。

河内源氏が芭を買わなければ、開始早々ランキング上位にいる清盛の芭を超えるどころか、ランクインする事もかなわない。

その上、ピックアップされるのはやはり平家の公達や公家ばかり。

「おのれ平家!! やっぱり得するのは平家ばかりではないか!」

こうして以仁王は自らの芭を放置。
せっかく摂津源氏たちが購入した芭も持て余し、流動しない芭は無価値となってしまった。

「芭流ねぇ……」

相模国の武士の惣領、三浦義澄は大番役で京都に来ていて、たまたま芭流の事を耳にした。

――清盛が考えた仕組みで、清盛を負かしたら……スカッとすんだろうねぇ。

この大番役も元々は清盛が考えた仕組みだ。
この国は朝廷のもの。
力が有り余っている東国の武士たちを、京の警備につかす事を義務とする。

任期は5年。

5年の間、給与などは出ない。
納税と同じような義務だからだ。

京の警備は強くなるし、東国武士の経済力も抑えることもできるというわけだ。

――オレたちにとっての得といえば、こうして京の最新情報が耳に入るって事ぐらいだろうな。

以仁王が芭流に参加し、散っていったのを目の当たりにして、義澄はどうしたら清盛に一泡吹かせられるか考えていた。

考えながら帰途につき、立ち寄ったのは伊豆の韮山、北条時政邸。

流人となっている源頼朝の元だった。

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