しかし、秀雄は悩んでいた。 果たし状を持ってきたという男は、身延山久遠寺で仕合った、あの杉の木の化物だろう。 『少しだけ見せてやるよ、お嬢ちゃん。アンタが進もうとしてる道の先で何が待ち構えているのか……な!』 その化物か続きを読む
タグ: 明治
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陸奥天兵の章 園部秀雄編 5
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陸奥天兵の章 園部秀雄編 4
明治二十一年秋――。 たりたが佐竹鑑柳斎の撃剣一座に入門して二年半。 父との約束の三年まであと半年という所まできた。 ――私は……どこまで来たんだろうか……。
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陸奥天兵の章 園部秀雄編 3
明治十九年。 東京で、講道館の西郷四郎という小柄な青年が「山嵐」という技をもって、当時の柔術の名門、戸塚楊心流を破った頃――。 たりたの故郷では直心陰流剣術の佐竹鑑柳斎がやって来ていた。
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陸奥天兵の章 園部秀雄編 2
明治二年三月。東北の村に、少女が生まれた。 名付けられた名は――たりた。 「また女かよ……」 父親が呟いたのも、ある意味無理はない。この日下家には、すでに七人の子がいたが、うち女が五人もいたのだから。 女はもう沢山、もう続きを読む