第5話 木曽義仲、芭流(VALU)で騒動を起こすこと
木曽義仲も源氏の出身で、源頼朝のいとこにあたる。
源頼朝の支持基盤は主に関東だったが、木曽義仲は甲信越の支持があって、芭流(VALU)への参加も早かった。
これが功をなして早くも平家の芭流ランクに食い込むほどの芭の価値をたたき出した。
「義仲様……そろそろでございますな」
この絵にかいたような堅物男は、木曽義仲の側近、今井兼平である。
兼平は木曽義仲に芭流参戦を促し、加えて自身の妹である巴御前も芭流で売り出した張本人。
朝日が輝くが如くのイケメン武士と、美貌の女武者のコンビはたちまち芭流内の注目の的となった。
毎日1つづつ売り出される芭(VA)は、連日ストップ高で売買されていた。
しかし、今井の「そろそろですな」という言葉に木曽義仲が頷くと、事態が急変した。
なんと木曽義仲、巴御前を始めとした木曽勢全員が持っている芭を全て最安値で売りに出したのだ。
毎日1芭づつの売りで、ごく一部の人間しかもっていなかった木曽義仲や巴御前の芭は、それを持っているだけでステイタスだった。
限界まで高騰していた芭が、これにより誰でも手に入ってしまう事となり、ステイタスとしての価値は無くなってしまう。
しかも、最安値だ。
初期の芭保持者(すなわち木曽勢)以外の、高額で取引していた公家や朝廷内の人々には大打撃だった。
得したのは木曽勢のみ。清盛にも朝廷にも一泡ふかしてやったと木曽勢は大喜びしたのは一瞬だった。
「……いや、普通にこれアカンでしょ」
現代の株式でいえばインサイダー取引にあたるが、芭流は株式ではない。
なんら違法性はないのだが、「損した」と思わせてしまった相手が多すぎた。
そしてその中に清盛や朝廷がいた事が、木曽義仲の運の尽き。
木曽義仲、巴御前を始めとした木曽勢は芭流から追放されてしまったのだった。
「なるほどねぇ……それじゃぁもっと上手くやってみましょうか」
そして一部始終を見ていた源頼朝が、ついに本腰を入れる。